あっ!あの時までは覚えてたのに!そんな日常の陰りをなくすために。
ADHDによくある「忘れ物」
これは“意志の弱さ”や”努力不足”ではなく“実行機能の特性”によるものです。
本記事では、特に信頼性の高い研究・レビューをもとに、忘れ物を減らすための具体策を提案します。
実は、筆者のフロップも不注意優勢型のADHDなんだケロ
科学的+当事者として役に立つ情報をピックアップしたので最後まで読んでくれると嬉しいケロ
ADHDの日常にはなぜ「忘れ物」が起こるのか?――メカニズムを知る
ADHDの実行機能の弱さ:記憶・切り替え・維持の困難
ADHDの脳は、ワーキングメモリ(作業記憶)や計画性、持続力、切り替えなどの実行機能が弱い傾向があります。
この脳の特性が「今やるべきことを頭でキープできない」「あとで思い出すつもりが忘れる」という事態を招き、持ち物をうまく準備できないことに繋がります。
ADHDの人はワーキングメモリが少ないことで特に忘れ物をしやすくなってるんだね!
気づいてくれてうれしいケロ
忘れ物をするのは「誰にも起こりうること」だから、悩んでいても対策できないことが「甘え」と捉えられがちな問題ケロ
でも実際はADHDの人の脳の仕組みは、普通の人の脳より忘れ物を誘発しやすい特性を持っているので、防ぐのはとても難しいことなんだケロ
大変だね。
うまく工夫するために、ADHDの脳の仕組みについて詳しく知りたい!
さっそく、ドゥランド博士らの研究からADHDの脳の仕組みを紐解いてみるケロ
ドゥランド博士らは2020年の論文で、「成人のADHDでは整理能力・組織化能力が低く、戦略を“使い続けること”が難しい」という傾向を報告しています。
わあ、なんか急に言葉が難しくなった…!
解説するケロ
●ADHDの整理能力・組織化能力が低いとは?
物の管理、時間の管理、タスクの順序立てなど「整理する力」「整える力」が弱い傾向があるということです。
例)机の上が散らかりやすい、提出物の期限を忘れる、必要な物がどこにあるかわからなくなる。
●ADHDが戦略を使い続けることが難しいとは?
忘れ物対策やタスク管理の工夫を「やってみる」ことはできても、長期的に習慣として続けるのが難しいということです。
例)最初はチェックリストを使っても、数日後には使わなくなってしまう。
あるあるケロね
これらの特徴からADHDの生活には「忘れ物」がついて回ることになります。
対策には「環境・仕組み・補助ツール」を設計した具体的行動指針が必要です。
ここからは科学的に効果が示唆されているADHDの忘れ物対処法を紹介します。
■ADHDの忘れ物に効果が報告されている6つの対策
以下の表は、「研究で示唆 or 実証された方法」と、それを日常で使うヒントをセットにしたものです。
| 対策 | どういうものか | 研究・レビュー等の根拠 | 実践ヒント |
|---|---|---|---|
| チェックリスト/外在化 | 出発前・準備時に持ち物をリスト化 → 頭から外に出す | 組織化スキルトレーニング介入(OST)系研究で、時間管理・物品管理改善に効果ありと報告。 | リストは5〜8項目以内に。書き出したら毎日同じフォーマットで使う。紙+スマホ併用もおすすめ。 |
| リマインダー/通知利用 | スマホ/SMS/タイマーで「持ち物チェック」を促す | デジタル介入レビューでは、ADHD対象のアプリ・通知型介入でポジティブなアウトカムあり。 | 通知は1~2回、具体的な言葉で。「出発10分前に“鍵・財布確認”」など。 |
| 定位置化/パッキングステーション | 玄関や定位置に持ち物を集約して“動線上”に置く | 学校・成人支援介入レビューで環境構造化が忘れ物・遅刻減少に寄与することが挙げられています。 | “見える場所”かつ“通る場所”に置くのが鉄則。ラベリングで定着を助ける。 |
| ルーチン化(夜準備 → 朝確認) | 前夜にバッグを完成、朝は確認だけ | 習慣形成理論・ADHD行動介入で「決定を減らす」手順化が成果につながると示唆。 | トリガーを決める(例:寝る前に“歯磨き→バッグ確認”)。2週間は通知補助を残す。 |
| 実行機能トレーニング/CBT/GMT | 計画、切り替え、モニタリングを訓練 | 成人ADHD向け研究で、iCBTやGoal Management Trainingが日常機能改善に効果を示した報告あり。 | 小さな場面(「明日の持ち物」課題など)から始め、習慣化する。アプリやコーチ導入も検討。 |
| サポート・コーチ/“支援者”介入 | 家族・仲間・コーチが定期チェックや促しを行う | 成人支援レビューで、支援者を介した組織化支援が複数研究で採用されています。 | 支援の負担を軽くするため、チェック頻度や内容を最初に合意しておく。リモートチェックも可能。 |
ADHD忘れ物対策 チェックリスト例:今日から使える持ち物チェック表
[〇] 財布
[〇] スマホ
[〇] 鍵
[〇] 定期券/交通 IC
[〇] 薬・サプリ
[〇] ノートPC / タブレット
[〇] 充電器
[〇] 書類フォルダ
[〇] 筆記具
[〇] その他(例:水筒、資料、傘 など)
使い方:手元に同様の必要な持ち物を記載したチェックリストを用意しましょう
- 夜、バッグに該当品を入れながらチェックする
- 朝、印をつけたものを再度触って確認
- 持ち物ごとにラベルや色分けをすると抜けが減る
ADHD忘れ物対策の“よくある壁”とその対処法
| 壁 | 原因 | 対処アイデア |
|---|---|---|
| 通知を無視してしまう | 通知が多すぎて“ノイズ化” | 通知回数を減らし、文言を短く具体化 |
| リスト作りに時間がかかる | 頭で整理するのが重い | 最初はテンプレを使い、少しずつ自分用にカスタマイズ |
| 続けられない | “忘れ物対策”が義務感になっている | 小さな成功体験を記録し、「今日は抜けなかった」を可視化 |
| 支援者が飽きて支援をやめる | 「催促ばかり」で関係性がギクシャク | 支援頻度を段階的に減らす、感謝を示す、チェック回数を減らす |
ADHDの忘れ物対策に運動・身体活動も関係する?
興味深い研究もあります。ADHD児童を対象に、認知作用を伴う運動(cognitive-aerobic exercise) や強度の高い運動を促した研究で、作業記憶(ワーキングメモリ)や抑制制御が改善するという結果が報告されています。抑制制御が弱いと、「今やりたいこと(スマホを見るなど)」に流され、準備や確認を後回しにして忘れるといった形で、忘れ物につながることがあります。
運動そのものが「忘れ物対策」になるわけではありませんが、実行機能を底上げする作用を期待できるため、他の対策と組み合わせて使う価値はあるかもしれません。
運動して悪いことはないですしぜひ習慣に取り入れてみてください。
ADHDとして生き抜くために:習慣化・アセスメント・調整の具体的流れ
- 最初の2~3週間は通知や補助を活用する
→ 習慣が定着したら徐々に補助を外す - 定期的に振り返る
→ どこで忘れがちか、自分の心理状態や体調も含めて - ツールを変えて刺激を与える
→ リスト形式を変える、通知音を変える、支援者をローテーション - 成功を記録し可視化
→ 忘れなかった日数、抜け漏れゼロ率などをカレンダーにマーク
ADHDの忘れ物対策に関するよくある質問(FAQ)
Q. リストだけで足りない場合は?
→ リストは“入り口”役。通知・定位置・支援者などを併用することで補強することが大切です。
Q. デジタルとアナログ、どちらがいい?
→ 両方使うのが最も実用的。紙は “目に見える所” に置く、スマホは移動中にチェックできる。
Q. 忘れ物がひどくて日常生活に支障があるんだけど、これだけで十分?
→ これらは“補助的な仕組み”です。日常生活が困難なら、医療機関や専門家との併用を検討してください。
まとめ:ADHDの忘れ物を減らす最小限の3ステップ
- 外在化(チェックリスト・通知)
- 定位置化/パッキングステーション
- 夜準備 → 朝確認のルーチン化
これらをベースに、CBT/支援者介入/運動といった補完策を組み込んでいけば、「また忘れた…」の日はずっと減らせるはずです。
この記事があなたのライフスタイルにあった忘れ物対策のヒントになればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
注意:この記事は研究成果やレビューをもとにした一般的な情報提供です。診断や治療の代替ではありません。ADHDについて強い困りごとがある方は、必ず精神科・臨床心理士・発達支援機関などの専門家に相談してください。

