「なぜか人より疲れやすい」「頑張っているのにずっと心が苦しい」
そんな生きづらさを抱えていませんか?
そう感じるのはあなたの性格や能力の問題せいだけではありません。
近年の心理学研究では、特定の思考のクセや環境との相互作用が、ストレスの感じやすさに大きく影響することが示唆されています。
本記事では、学術研究(査読付き論文等)を根拠に、生きづらさを感じやすい人の特徴や、日常で取り入れられる「自分を楽にするヒント」を解説します。
※注意
本記事は自己理解を深めるための一般情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を目的とするものではありません。
心身に強い苦痛がある場合は、専門の医療機関への相談をご検討ください。
そもそも「生きづらさ」とは何か?
心理学において「生きづらさ」は正式な診断名ではありませんが、一般的に「個人の特性と環境がうまく噛み合わず、慢性的な心理的負荷がかかっている状態」を指します。
- 日常生活でエネルギーを消耗しやすい
- 対人関係において過度に緊張する
- 自己評価が低く、自分を肯定しにくい
これは決して「心の弱さ」ではなく、特定の性質が環境に対して敏感に反応している結果であると考えられています。
研究で示唆されている「生きづらさを感じやすい人」の4つの特徴
近年の心理学的知見から、生きづらさと関連が深いとされる主な特徴を紹介します。
1. 完璧主義傾向ー自己基準の高さー
ある研究では、「高い自己基準」に加えて「失敗への過度な恐れ」を持つタイプの完璧主義が、心理的ストレスや適応障害と関連することが示されています。
- 「100点以外は0点と同じ」と考えてしまう
- 小さなミスをいつまでも後悔する
- 他人の期待に応えようと自分を追い込む
根拠:Flett & Hewitt (2002)
2. 自己批判的な思考
自己批判(自分を責める習慣)が強い人は、脳が常に「脅威モード」になり、心理的苦痛を感じやすいことが示唆されています。
- 何かがうまくいかないと「自分が悪い」と直結させる
- 他人の成功と自分の現状を比較して落ち込む
- 褒められても「お世辞だ」と否定してしまう
根拠:Gilbert et al. (2004)
3. 感覚処理感受性(HSP)
「HSP(Highly Sensitive Person)」として知られるこの特性は、刺激や感情情報を深く処理する神経系を持つ人を指します。
- 職場の同僚の機嫌や、場の空気を敏感に察知する
- 強い光や騒音、人混みで人一倍疲れやすい
- 一度に多くのタスクを頼まれるとフリーズしやすい
根拠:Aron & Aron (1997)
4. 曖昧さへの不耐性
「不確実な状況」を耐えがたいものと感じる傾向は、不安感やストレス反応と密接に関係しています。
- 「正解」や「確実な未来」が見えないと強い不安に襲われる
- 白黒はっきりしない人間関係や状況が苦手
- 決断を下すのに極端に時間がかかる
根拠:Buhr & Dugas (2002)
生きづらさを強める「認知の偏り」の正体
私たちは出来事をあるがままに見ているのではなく、自分なりの「色眼鏡」を通して解釈しているという考え方があります。
心理学者のアーロン・ベック(1976)は、この偏った解釈を「認知の歪み」と呼びました。
そして、生きづらさを感じる人には以下のような思考パターン「認知の歪み」があるとされています。
| 思考パターン | 内容 | よくある例 |
| 全か無か思考 | 完璧か失敗かの二択で考える | 「一度の遅刻で信頼はゼロになった」 |
| 過度の一般化 | 一つの事例をすべてに当てはめる | 「今回振られたから、一生独身だ」 |
| 心の読みすぎ | 根拠なく相手の不快感を疑う | 「挨拶がなかったのは、嫌われているからだ」 |
心を軽くするためにー日常でできる3つのアプローチ
ここでは生きづらさを「治す」のではなく、「付き合い方を変える」ためのヒントを紹介します。
① 「事実」と「解釈」を切り分ける
頭に浮かんだ苦しい考えを、そのまま「真実」だと思わない練習をしてみましょう。
脳は発達するにつれて、何度も使う思考を自動的に使いやすくなります。そうして凝り固まってしまった認知の歪みがあるかもしれません。
そんな歪みを見つめなおすためには、実際何が起きたのかという事実と、自分の解釈を分けて考えてみるのがおすすめです。
- 事実: 部長に資料を差し戻された。
- 解釈: 私は能力が低く、見捨てられるに違いない。
- このように分けることで、思考との間に適切な距離(心理的柔軟性)が生まれます。
② エネルギーの「省エネ運転」を許可する
生きづらい人は、常にアクセル全開で生きていることが多いです。
常に頑張っていないといけない、そんなプレッシャーを常に抱えてはいないでしょうか?
そのプレッシャーは時としてエネルギーとなりますが、少し疲れたとき自分の首をしめる重しとなります。
少しだけ省エネを心がけてみましょう。60点の自分もみとめてリラックスできるようなれば生きづらさを感じにくくなるかもしれません。
<練習方法>
- 1日の中に「何もしない時間」を5分だけ作る
- 「今日は60点でOK」とあらかじめ決めておく
- 戦略的に手を抜くことは、さぼっているのではなく長く走り続けるための高度な技術です。短距離走ではなく長距離走をイメージしてエネルギー調整をしてみましょう。
③ 環境とのミスマッチを検討する
生きづらさは「あなたの能力不足」ではなく「環境との相性」の問題かもしれません。
仕事、暮らし方、サポートの必要性など、その時々のコンディションで違います。
生きづらいと感じるのは今の環境があなたに合っていないからかもしれません。
<考え方>
- 静かな環境、自分のペースで進められる場所を好むのは自然なことです。
- 自分を変える努力よりも、「今の自分が少しでも呼吸しやすい場所」を探す視点を持ってみてもいいでしょう。
まず「自己理解」して生きづらさを変えていく
生きづらさを感じることは、あなたがそれだけ繊細に、真面目に世界と向き合っている証拠でもあります。
研究が示しているのは、「あなたが悪い」ということではなく、「あなたの特性が、今の環境や思考パターンと少しぶつかっているだけ」という事実です。
無理に自分を変えようとするのではなく、まずは自分の特性を知り、自分に合った「取り扱い説明書」を作っていってみませんか。
このブログがその一助になれば幸いです。
参考文献
- Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders.
- Flett, G. L., & Hewitt, P. L. (2002). Perfectionism and maladjustment.
- Gilbert, P. et al. (2004). Self-criticism and psychological distress.
- Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity.
- Buhr, K., & Dugas, M. J. (2002). Intolerance of uncertainty.

