「やらなきゃいけないのに、つい後回しにしてしまう」
そんな経験は誰にでもあります。宿題、仕事のレポート、掃除、健康のための運動……。先延ばしは一時的には楽ですが、後で大きなストレスや自己嫌悪を生みます。
この記事では、心理学の研究をもとに「なぜ先延ばししてしまうのか」を解説し、今すぐ実践できる解決法を紹介します。
先延ばしをしてしまう心理学的な原因
1. 感情回避(Emotional Avoidance)
人は「不快な感情」を避けるために行動を先延ばしします。
例:退屈、不安、面倒くさい → SNSやゲームで気をそらす。
2. 失敗回避と完璧主義
「うまくできなかったらどうしよう」という不安から、手をつけないことを選びます。特に完璧主義傾向が強い人に多く見られます。
3. 時間割引(Temporal Discounting)
人は「将来の利益」より「今の快楽」を優先しがちです。これを心理学では時間割引と呼びます。例えば「今は動画を見る → 後で頑張ればいい」という思考です。
4. 意志力の消耗(Ego Depletion)
決断や集中を繰り返すと意志力は疲弊します。夜になるほど先延ばしが増えるのは、セルフコントロール資源が減っているためと考えられています。
先延ばしをやめるための心理学的アプローチ
1. 「5分だけやる」着手効果
「5分だけやろう」と自分に言うと、心理的負担が軽くなります。始めることでやる気が高まる作業興奮(Starting Effect)が働き、継続につながります。
2. タスクを小さく分ける
「レポートを完成させる」より「見出しを3つ書く」と分ける方が取り組みやすく、達成感も得やすいです。
3. 感情を言葉にする(ラベリング)
「不安だから避けているんだな」と気づくことで感情に振り回されにくくなります。マインドフルネス研究でも効果が示されています。
4. ごほうびを設定する
「終わったらコーヒーを飲む」など小さな報酬を設定すると、モチベーションを維持しやすくなります。
5. 環境を整える
誘惑を減らすことも有効です。通知をオフにする、机の上を片付けるなど、環境デザインで行動を促します。
今すぐできる実践ステップ
- タスクを細分化して「最初の一歩」を決める
- 「5分だけやる」と自分に約束する
- 終わったら小さなごほうびを用意する
- できた自分を言葉で認める(自己承認)
まとめ
先延ばしは「怠け」ではなく、脳や感情の働きによる自然な反応です。だからこそ、自分を責めるより「仕組みで工夫する」ことが大切です。心理学を応用すれば、少しずつ先延ばしの習慣を変えていけます。
今日から「5分だけやる」を試してみましょう。
参考文献
- Steel, P. (2007). The Nature of Procrastination: A Meta-Analytic and Theoretical Review of Quintessential Self-Regulatory Failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65–94.
- Tice, D. M., & Baumeister, R. F. (1997). Longitudinal Study of Procrastination, Performance, Stress, and Health: The Costs and Benefits of Dawdling. Psychological Science, 8(6), 454–458.
- Sirois, F. M., & Pychyl, T. A. (2013). Procrastination and the Priority of Short-Term Mood Regulation: Consequences for Future Self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127.
- Duckworth, A. L., & Gross, J. J. (2014). Self-Control and Grit: Related but Separable Determinants of Success. Current Directions in Psychological Science, 23(5), 319–325.

