「実家で部屋がないのが耐えられない、一人の時間がないと狂ってしまいそう」
「彼氏がどうしても一人の時間が欲しいと言う。一人の時間がないとダメな人もいるの?」
「同棲を始めたけど、一人の時間がないのがつらい、どうして?」
この記事では、そんな疑問に答えるべく心理学・脳科学の研究論文で発表されている内容をもとに、特徴を7タイプに整理して紹介します。
記事の最後に参照した論文リストも載せています。
「一人になりたい」と思うのはこれから紹介する「7つの特徴」に当てはまっているからかもしれません。
実は私も一人の時間がないと疲れるんだよね…!
さっそくどんな特徴があるか見てみるケロ
■1人の時間がないと疲れる理由①|バッテリー切れを起こしているから
脳は無限に情報を処理することはできないということが近年の研究で明らかになってきています。
バッテリー切れってスマホみたいに?
そうケロ!脳にも「認知資源」っていうエネルギーがあって、集中したりマルチタスクをするとどんどん減っていくんだケロ
心理学では「認知資源」というエネルギーが外部刺激やマルチタスクによって急速に消耗し、最終的には脳が「バッテリー切れ」を引き起こすとされています。
➤ どうしても一人になりたい
➤ 一人の時間がないと気が狂いそう
そんな感覚の時は、脳の認知資源が枯渇しているのかもしれません。
脳科学の実験でも、長期間のマルチタスクや課題に集中すると前頭前野の活動が低下することがわかってるケロ
脳科学や心理学の分野では一人になりたいと思うのは特別な感情ではなく、正常な脳の機能だと考えられているのです。
刺激が多い環境で認知資源すぐに埋まってしまい、注意力や集中力が低下してしまう現象はロード理論(Load Theory)と呼ばれ広く知られています。
ロード理論について詳しくは別の記事にまとめるケロ!
■1人の時間が必要!脳のバッテリー切れあるある
●職場でマルチタスクに追われ「頭がパンクした」と感じる
●帰宅後はとにかく目を閉じて休みたい
●読書や勉強に手がつかない
1人の時間が欲しい人のサポート方法
●何より無理せず一人にしてあげる
●連絡が途絶えても「今は充電中」と理解する
●タスクを引き受けてサポートする
■1人の時間が欲しくなる前に――予防方法――
●毎日30分でも無刺激な時間をルーティンとして取り入れる。(散歩や静かな休憩、瞑想など)
●予定はには必ず休息の時間や日程を組み込む。
現代では気づかないうちに予定過密になっている人も多いです。
自分の限界を把握して安定した日々を過ごしたいですね。
■1人の時間がないと疲れる②|内向的な性格だから
性格として一人静かに過ごしたほうが落ち着く「内向的」な人は疲れやすく一人で回復する時間が必要なことが分かってきています。
私、友達と会うのは好きなんだけど、長く一緒にいると疲れるんだよね…
あんみつちゃんも内向的な脳の特性があるのかもね!
内向的な人は脳の覚醒レベルが高くて、刺激をたくさん受け取ってしまうんだケロ
内向的とは、自分の内側に対して大きくエネルギーを使う性格を指します。
外的刺激よりも、思考や内省といった内的活動で満たされやすいのが特徴で、外から観察すると、おっとりした人、静かな人といった印象になることが多いです。
しかし意外にも最新の研究では内向型の人は外向型の人に比べて、脳の働きが活発ということが分かってきています。
知らなかった!
自分の思考に集中するから、脳は常にフル回転なんだね!
心理学者ユングは「内向的な人は外部刺激に敏感で、長時間の対人接触で疲労しやすい」と指摘しました。
実際、脳科学の分野で脳の働きを解析すると内向型の人は外向型より脳の覚醒レベルが高く、少しの刺激で十分に満足する設計になっていることが分かったのです。
内向型の人はより多くの刺激を少ない出来事から得ることができるため、洞察力に優れるというメリットがあります。しかし同時に過剰な刺激を得てしまうため、脳が疲れやすく回復のための刺激の少ない静かな時間が外向的な人より多く必要になります。
別の視点での研究だけど認知資源の限界とも矛盾しないケロ
■1人の時間がないのがストレス!内向型の人あるある
●いろんな人と話した日の夜は一人反省会
●飲み会などのイベントが終わったらぐったり
●引っ越しや、新しいチームへの配属など変化が多い時ほど一人になりたい
■1人の時間が欲しい人のサポート方法
●必要がないときは無理に発言を引き出そうとしない。
自分の中でじっくり考えるのを楽しんでるかもしれないもんね!
●「元気出して!」より「ゆっくりしてね」と声をかける。
刺激につかれているときは一人でゆっくり休むのが一番ケロ
●予定を入れない自由な時間を尊重する。
私はこれうれしい!
元気をチャージするためにゆっくりする日も欲しい!
■1人の時間が欲しい時どうすればいい?――対処方法――
●「ひとり時間」が自分にとって大切な時間だということを自分で分かっておく
●周りの人に自分は内向型であること、一人の時間を大切にしていることを伝えること
●通知をオフにしたり連絡を返さないことがある場合は事前にそういうこともあると伝えること
自己理解と周りの人への思いやりの気持ちが大切ケロ
周りの人が勝手に自分のことを分かってくれるということは少ないです。
もしかしたら「一人にさせてほしい」、「今は会話したい気分じゃない」そんなあなたの態度が相手には冷たく映っているかもしれません。
どきっ!急に部屋に引きこもったり、LINE返すの遅くなったことあったな…
自分の行動原理を相手に伝えることは相手の不安を減らすことにも繋がります。
信頼関係があれば「黙っていても」「別の部屋で過ごしても」「返信がすくに帰ってこなくても」、今は一人になりたい時間なだと理解してもらいやすくなるでしょう。
■1人の時間が欲しい理由③|HSP/感覚過敏だから
“受け取りすぎる”共感神経を持っている人はハイリーセンシティブパーソン/HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれ、人口の約20%が該当するといわれています。
光・音・匂い・他人の感情に敏感で、感受性豊かで繊細で傷つきやすい心の持ち主とされています。
20%…5人に1人も!?
5人家族なら1人、30人クラスなら6人はいる可能性が高いケロ
脳科学や神経科学の研究で多く用いられる、「fMRI」という脳のどの領域の血流が活性化しているかが観察できる装置を用いた研究では、HSP傾向が高い人は、特に「他人の表情を見るとき」に感情処理の脳領域が強く反応することが示されています。
いろんな刺激に敏感なHSPだけど、特に「表情」で感情が動く脳の特徴があるケロ
■1人の時間がないと辛い!HSP/感覚過敏の人あるある
●大音量にさらされてへとへと
●友人の悩みを聞いたら自分もぐったり
●ネガティブな評価を受けて立ち直れないほどしょんぼり
●晴天の日にサングラスをせずに外を歩いてぐったり
●満員電車に乗って帰ったらへとへと
●同僚がイライラしていたらびくびく
1人の時間が欲しい人のサポート方法
●HSPとはどんな人なのか理解しておく
この人は刺激に敏感な脳の持ち主かもしれない、こういうことは苦手かも、と考えることができるケロ
視野の広さは行動の選択肢を増やすことに繋がるケロ
●刺激の強い場所に行く場合は事前に予定を伝えておく/「行かない」選択を尊重する
事前に予定が分かっていれば日差し対策のサングラスや騒音よけのイヤホンを準備することもできるケロ
●強い言葉や表情で接しない
私はHSPじゃないかもだけど、そうしてほしいよ…
ボクもケロ
HSP相手なら余計に気を付けてほしいケロ
■1人の時間がないと辛い!どうすればいい?――対処方法――
●苦手な刺激を把握しておく
●診断書をもらっておく
●周りの人に自分が苦手なことは伝えておく「人込みや大きい音は苦手です」
●サングラス、イヤホンなど自分を刺激から守るグッズを持つ
●不安な感情が多い場合は、「感情を吐き出す3行ノート」をつけてみる
●表情を過度に読み取ってしまう場合は、周りの人がどう思っているのか聞いてみる「〇〇さん怒ってたかな?」
■1人の時間が欲しい理由④|創造性/クリエイティビティを高めたいから
1人でいるときに創造性が高まるタイプの人がいます。
有名なアイディアもシャワー中や散歩中に生まれたものが多いケロ
1人で過ごしているときには内省的な思考や未来想像に関わる「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」が活発になり、クリエイティビティが高まるとされています。
■1人の時間が必要!創造性が高まる状況あるある
●部屋で一人、小説や絵に没頭する。
●1人で散歩しながらアイディアを考える。
●1人でシャワーを浴びながらアイディアを考える。
●寝る前に一人、日記を書く。
■1人の時間が欲しい人のサポート方法
●スランプの時こそ一人にしてあげる。
●集中サイン(イヤホン・扉札)を尊重して邪魔をしない。
■1人の時間がないと困る!――1人になるための工夫――
●一人時間の目的を伝える
●集中したい時間を事前に知らせる
●サインやルールで合図を出す
●終わった後の交流予定を示す
●協力への感謝を伝える
■1人の時間が欲しい理由⑤|目標に集中したいから
明確な目標を持っている人は学習、練習、計画のために一人の時間を必要とすることが多いです。
なるほどたしかに!資格の勉強をするときとか、一人で集中したい!
特に自己効力感(Self-efficacy)が高い人は「やればできる」という感覚が強く学習やスキルアップのために意識的に一人時間を確保する傾向があります。
一人でも成果が出せるという自信があるケロ
■1人の時間が欲しい!目標に集中したい人あるある
●朝活で一人黙々と勉強
●休日は予定を入れずスキルアップに充てる
■1人の時間が欲しい人のサポート方法
●予定を尊重する
●静かな環境を整える
●雑務をサポートする
●目標に共感を示す
●努力の過程を認める
■1人の時間が集中できる――1人になるための工夫――
●一人時間の目的を伝える
●集中したい時間を事前に知らせる
●サインやルールで合図を出す
●終わった後の交流予定を示す
●協力への感謝を伝える
■1人の時間が欲しい理由⑥|アイデンティティを探求しているから
人は「自分は何者か」を探す時期を経験します。
発達心理学者エリクソンに初めに提唱された、アイデンティティを形成するこの時期には、一人で考える時間が不可欠です。
その多くは12歳〜18歳ごろに起こるケロ
ただし大人になっても人生の節目には誰でもそういう時間が必要になるケロ
■1人の時間がないとストレス!アイデンティティの課題を抱えやすい時期あるある
大人になっても「私は何者か」という問いは再び立ち現れることがあります。
●病気・離婚・退職などでそれまでの自分の前提が揺らいだとき
●就職や転職でキャリアの方向性を考えるとき
●結婚・出産などライフイベントで役割が変化したとき
●老いを感じ死を意識するようになったとき
■1人の時間が欲しい人のサポート方法
●否定せずに話を最後まで聞く
●「自分で考える時間」を尊重する
●多様な経験や選択肢に触れられる機会を提供する
●価値観や悩みを安心して語れる環境を作る
●すぐに答えを出させようとせず見守る
●小さな挑戦を応援して成功体験を積ませる
●失敗しても受け止められる安心感を示す
大切な人がずっとアイデンティティについて悩んでいるとちょっともどかしいな…
ケーロ
でもその時間は生きていくために大切な時間ケロ
結論をせかさず見守ってあげるケロ
■1人の時間がないとストレスを感じるとき――対処法――
●紙に自分の考えを書き出して悩みを言語化してみる
●本や周りの人の話から刺激を受ける
●新しい体験をする
●身近な人に相談する
あまり一人で思い悩みすぎると「自己参照のパラドックス」と呼ばれる不安な心理に陥ってしまうこともあるケロ
ひどく思い悩んだときは信頼できる人に悩みを打ち明けてみるケロ
■1人の時間が欲しい理由⑦|進化の過程で孤独が安心と感じる人もいる
進化心理学的には、群れから離れて観察する個体は生存上の役割を果たしてきました。
その結果現代には一人でいることに安心を覚える人一定数存在するのです。
脳科学の研究でも、一人でいても孤独を感じにくい人は情報処理の仕組みが異なる可能性があるとされています。
●皆といるのも楽しいが、一人で散歩するときの方が落ち着く。
●どんな時でも一人で行動するのが好き
このように遺伝子の段階から孤独を好む性質を持った人が一定数存在することが明らかになってきたのです。
サポート方法や対処法はこれまで紹介したものとほとんど同じケロ
■まとめ:一人の時間がほしい/一人の時間がないと疲れてしまうのはなぜ?
- 脳のバッテリー切れ
- 内向的性格
- HSPや感覚過敏
- クリエイティビティを高めたい
- 目標に集中したい
- アイデンティティの探求
- 遺伝的に孤独が心地いい珍しいタイプ
「一人の時間が欲しいのはなぜ?」への答えは“心と脳の設計上、必要だから”です。
1人の時間が欲しいと感じるのはわがままでも弱さでもなく、それぞれの状況や性格、遺伝的特性から必要な時間なのです。
一人になりたいという気持ちを抱えた人も社会の一部として、緩やかにしかし確実に役割をなしているのです。
この記事がみなさんの自己理解や他者理解の役に立つと幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
■参考文献
- Lavie, N. (2004). Load theory of selective attention and cognitive control.
- Acevedo, B.P. et al. (2014). The highly sensitive brain: An fMRI study of sensory processing sensitivity. NeuroImage.
- Raichle, M.E. (2001). A default mode of brain function. PNAS.
- Fair, D.A. et al. (2008). The maturing architecture of the brain’s default network. PNAS.
- Jung, C.G. (1921/1971). Psychological Types. Princeton University Press.
- Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W.H. Freeman.
- Trapnell, P.D., & Campbell, J.D. (1999). Private self-consciousness and the self-absorption paradox. Journal of Personality and Social Psychology.
- Cacioppo, J.T. et al. (2017). Brain scans show lonely people process the world differently. USC Dornsife News.
